CREATIVE IN FOCUS

クリエイティブ・イン・フォーカス

すべてのメディアで見るビジュアルは、どれも私たちの世界に対する理解を示しています。
毎年ゲッティイメージズのクリエイティブチームは、世界中のメディア、
ポップカルチャー、広告、アート、そしてgettyimages上で
検索・ダウンロードされたデータを下に、今年のビジュアルトレンドを予測し、
CREATIVE IN FOCUS』というタイトルで発表しています。

VIRTUALITY

バーチャリティは美しさの基準を変えたのではなく、美の味わい方を広げました。
写真をただ見るのではなく、その中に入るという新たな写真体験を生み出したのです。

ローレン・カッテン

シニア・アートディレクター

“テクノロジーは、無限に世界のサイズを広げています。
デジタル技術によって、その場にいながら
どこへでも行くことができます”

COLOR SURGE

目まぐるしく変化する世の中で、消費者は普通に対してうんざりしており、
通常とは違った色のコンビネーションを使ったキャンペーンが、人々に関心と興奮を呼び起こします。
それは、圧倒的に美しいものであるか、この上ないほど醜いものであるかを問いません。
色を巧みに使った力強さが、関心をもたらすのです。

クラウディア・マークス

シニア・アートディレクター

“色は写真を構成する一要素ではありません。
もはや写真そのものを表す要素です”

Special Interview

とんだ林 蘭

“毒みたいな表現に良い反応がある
カワイイの意味が広がっている気がしますね”

とんだ林 蘭

アーティスト

 ビジュアルのトレンドを意識したことがなかったので、こうして紹介してもらえると、新鮮かつ、その視点には学ぶことが多いのですが、その反面、自分の表現は、ここから意地でもずらしたいと思うのが天邪鬼な私の正直な感想です。

 トレンドにある「NEW NAIVETY」の表す、ゆるさや遊び心は、私の表現と近いものを感じました。そして「COLOUR SURGE」は、私の特徴でもある色の使い方に共感します。色は私が表現する上で、強い武器だと思っており、ここが製作作業でもギリギリまで悩むところです。今ほどビジュアルが世の中に溢れている時代はないと思っていて、普通の人もカラーに対するセンスがとても高い時代だと思います。そんな中で作品が埋没しないためにも、私らしさとは何かを常に考えていて、最後に全体のバランスや違和感を感じられるかを含めてカラーを決めています。ただカワイイや面白いビジュアルだけでなく、日常に潜む毒みたいなものを感じられる作品にも良い反応があるので、カワイイの意味が広がっている気がしますね。

色をぶつけて違和感を作りたい

 作品にテーマとかは全くありません。その時思いついたことを、そのままビジュアルにして残しているだけです。溜め込むよりもすぐに出したい私にはすぐに発表できて、反応がわかるInstagramがとても合っています。誰もがアーティストにもなろうともしてなくて、ただ表現している気がInstagramから感じます。何かを作り出したいというのは人間の本能なのかもしれません。

 街を歩く人や、友人たちの服装からインスピレーションを得ることが多いですね。そこで感じたトレンドに、どう自分なりの違和感を入れていくのかを日々妄想しています。日常を少しだけずらすような非日常的なワクワクするアイディアを考えることが、創作の鍵になっています。

とんだ林蘭|TONDABAYASHI RAN
1987年生まれ、東京を拠点に活動。コラージュ、イラスト、ぺインティング、立体、映像など、幅広い手法を用いて作品を制作する。猟奇的でいて可愛らしく、刺激的な表現を得意とし、名付け親である池田貴史(レキシ)をはじめ、幅広い世代の様々な分野から支持を得ている。木村カエラ、東京スカパラダイスオーケストラなどの音楽アーティストや、MIHARAYASUHIROなどのファッションブランドへも作品提供を行うなど、精力的に活動の場を広げている。
http://tondabayashiran.com

UNFILTERED

大胆なドキュメンタリースタイルのビジュアルは、広く受け入れられています。
アンフィルタードは、ダイナミックで過激とも呼べるようなストーリーテリングの手法を実現。
不必要なノイズを減らし、消費者に気づきを引き起こしました。
他と異なることを怖れず、徹底した透明性を持つ情熱的なブランドは、
特にジェネレーションZやミレニアル世代の消費者に共感されます。

ゲンマ・フレッチャー

シニア・アートディレクター

“挑戦しているブランドは、フォトジャーナリズムの本物志向を
取り入れることで、若い消費者とつながり、
ありのままで自発的な強さを備えたストーリーテリングを行います”

GRITTY WOMAN

新しいタイプの女性が登場しています。慣例や壁を打ち壊すその女性は、
タフで粘り強く、真っ直ぐで、基本をおろそかにせず嫌なことからも目をそらしません。
そのため、人から妨げられたり、見下されたり、過小評価されることはありません。
一人のファイターであり、フェミニストであり、奇才なのです。
グリティ・ウーマンと呼ばれる新しいトレンドは、自分がどのように見えるかよりも、
自分が何をすべきかを考えています。

パム・グロスマン

ビジュアルトレンド・ディレクター

“男女間の役割や関係に関する議論が活発化するにつれて、
議論を見直すような新しいタイプの女性が登場しています”

Special Interview

湯山 玲子

“時代のインサイト
つまりある種の欲望を赤裸々に感じました”

湯山 玲子

著述家、ディレクター

 視覚偏重の時代が訪れたのだと思います。SNSなどで写真が氾濫し、 一般の方の写真リテラシーとセンスは確実に上がりました。良い / 悪い / 好き / 嫌いの判断を処理する時間も早くなりました。つまり写真をじっくり見て、味わうこと、意図や意味を感じること、読み解く時間や力無くなってきているのです。これは昔なら勉強して、やっとその入り口に立てるかどうかという教養的な楽しみであった写真や映像が、ネットのおかげで気楽に、古今東西、膨大なビジュアルアーカイヴにアクセスできることの功と罪といえるでしょう。広告する側からはかなり手強い時代になりました。写真は美術館にあるようなアートピースか、instagramになってしまい、その間にある広告的な写真に付き合っている時間や、その写真が表すコンテキストを理解して楽しむというのは、一部の成熟した人のみの嗜みになるかもしれません。

 「VIRTUALITY」は、映像の開拓時代ともいえる、見たことがない景色を、それまでの冒険のように自分で行くことなく、GO PROをつけた誰かの視点を、自分の視点として追体験できる時代が生んだものだと思います。

 「GRITTY WOMAN」というトレンドからは、シングルマザーの痛み。今のレズビアンカルチャー。男に期待しない、頼らない女性の強さ。未婚率の高さ。傷から立ち上がる戦う女性など、時代のインサイト、つまりある種の欲望を赤裸々に感じました。ここで描かれているような強い女性の姿がいよいよ広告に登場する時代が来たのかと感慨深いですね。広告において、女性の扱い方が大きく変わる時期かもしれません。

 このような流れを踏まえて、いま一度、ビジュアルコミュニケーションを考えてみるのも興味深いですね。

湯山玲子(ゆやま れいこ)
著述家、ディレクター。出版、広告の分野でクリエイティブ・ディレクター、プランナー、プロデューサーとして活動。同時に評論、エッセイストとしても著作活動を行っており、特に女性誌等のメディアにおいては、コメンテーターとしての登場多数。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッション等、文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代の『AneCan』から、50代の『HERS』まで、全世代の女性誌にコラム連載やコメントを多く発表。主な著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)。月一回のペースで、爆音でクラシックを聴く「爆クラ」イベントを開催中。(有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

GLOBAL
NEIGHBORHOOD

ソーシャル上でつながりが増え、(バーチャルに)ボーダレスな世界では、
出身地はもはや人格的に意味を持ちません。
文化的なアイデンティティが、より複雑で不定形なものになっているからです。
グローバル・ネイバーフッドとは、こうした流動性を取り込んだ社会を意味します。
集団の文化的アイデンティティが、私達がどこにいるかよりも
何を信じるかによって形作られることが増えてきたため、このトレンドが生まれました。

ガイ・メリル

アートディレクター

“人や情報の移動、商品の流通の世界的な増加は、
社会に変革を引き起こします。
そして、私達の自己認識さえも変化させる可能性を持っています”

NEW NAIVETY

ニュー・ナイーブティとは、自然発生的で遊び心がありながら、ときに不快さのあるビジュアルのことです。
それは、必ずしも“ブランドに当てはまる”ビジュアルでなく、風変わりだったりもします。
今こそ奇妙で野暮ったくなることを怖れず、みんなを笑わせましょう。

パム・グロスマン

ビジュアルトレンド・ディレクター

“賢い消費者は、選び抜かれたセレクトを避け、
ユルくてラフな感覚を好むようになっていて、
ビッグブランドも、この傾向を取り入れています”

Special Interview

前田 晃伸

“リアリティあるなし、ではなくて
ケータイで撮ったような写真が好きなんだと思う”

前田 晃伸

アートディレクター
グラフィックデザイナー

 6つのトレンドのどれにも言えることですが、世界が加速的に分断されていることが大きいのだと思います。少し大きな話になりますが、トランプがアメリカの大統領になるようなことが表していると私は考えています。

 「Post truth」「Alternative Facts」という言葉が表す通り、テレビや新聞で流れている大手メディアからまとめサイトまで、もう何を信じていいのかわからないし、何も信じない時代になりつつありますよね。多くの人はリアリティがあるなしや丁寧に作られた写真にも興味がなく、ケータイで撮ったような写真が好きなんだという印象があります。きっとこれが、「NEW NAIVETY」というキーワードの背景にあることだと思います。馴染みのあるデヴァイスにしっくりくる表現が正しく感じるといいますか。以降の表現として、トレンドという言葉で括るには難しい時代になってきたと感じています。

 人々にとってこれだ!と信じられる中心がなくなった時代だからこそ、SNSなどの些細なトピックにビビッドに反応したり、即時的なコミュニケーションが日々の拠り所になっているのではないでしょうか。つまりSNSが定着したことでビジュアル・コミュニケーションが大きく変わってきています。個人の欲望に近い表現を良しとしているから、それが雑誌や広告に影響していると感じています。

 この流れでは、今後の視覚表現や写真表現だけでなく芸術に関しても未来がないのではと悲観しています。今一度「写真」が世の中を切り取る力を持ちえるか問われていると思います。再び「写真」の自立し、新しい価値観を見いだしていくにはもう少し時間がかかる気がしますし、その役目は終えて新しい価値が生まれつつあるのかもしれません。「写真」が世相や感情をどう扱うかが今後の課題だと考えています。

 ただずっと写真に関してネガティブなことを語っていますが、何にでも揺り戻しはありますし、混沌とした過渡期だからこそ、やりようによっては新しい表現が生まれてくるチャンスはあるはずです。多発的に技術革新が起きている面白い時代だと感じています。 ローランドのリズムマシーンが世界を変えたように僕たちや次の世代が「写真」とそれを取り巻く環境を面白がっていくといいのかなと思っています。

前田晃伸 (まえだ・あきのぶ)
アートディレクター、グラフィックデザイナー。愛知県生まれ。デザイン事務所を経てデザインチーム「ILLDOZER」に参加。 解散後、CI、広告、カタログ、パッケージ、アパレルなど幅広く活動。現在『POPEYE』『TOO MUCH MAGAZINE』など、アートディレクションを手がけている。