地球の姿を上空からのビジュアルで表現することで、環境啓蒙活動にも力を注いでいるのが、フランス人フォトグラファー兼フィルムメーカーのヤン・アルテュベルトランだ。

ゲッティイメージズとパートナーシップ契約を結んだアルテュベルトランは、空撮について次のように語っている。「今では、Google Earthのようなバーチャル地球儀ソフトがありますし、ドローンで手軽に空撮することもできるようになりましたが、私が写真家になった頃は誰も空撮など行っていませんでした。衛星写真によって全てが変わったのです」

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Glacier tongue near the Khan Tengri peak, Sary Jaz Mountains, Ysyk Kol region, Kyrgyzstan (Credit: Yann Arthus-Bertrand/Getty Images 507896446)

1991年、アルテュベルトランは、空撮写真を専門とする世界初の通信社、Altitude Agencyを立ち上げた。 そして1999年には、5年以上の歳月をかけて地球環境の記録を空撮で綴った『Earth From Above(邦題:空から見た地球―21世紀への遺産)』を出版。世界24ヶ国語に翻訳され、発行部数は300万部を超えるヒット作となった。

 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の協賛で作成されたこの写真集は、美しくも壊れやすい地球環境の現状をビジュアルで物語る研究報告書となっている。

「現在の地球環境の状態は深刻です。しかし、統計や調査の情報を数字だけで見せられても、多くの人々は理解できるどころか混乱してしまうのです」と、アルテュベルトランは話す。

地球規模で直面している状況として、「2050年までに世界中のサンゴ礁の100%が消滅する可能性」「2020~2030年までに米モンタナ州グレーシャー国立公園の全ての氷河が消失する恐れ」「2025年までに18億人が絶対的水不足に、世界人口の3分の2が日常生活に支障をきたす水ストレス下状態に陥る危機」などが挙げられるが、これらの数字が深刻さを表していることは誰にでも分かるだろう。

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Scrap yard, Saint Brieuc, Cotes d’Armor, France (Credit: Yann Arthus-Bertrand/Getty Images 507916652)

アルテュベルトランにとって、このように抽象的でピンとこない数字を具体的証拠にするためのツールが、空撮写真だ。人間による自然資源の利用と管理の結果は、カメラフレームに収められることで、反論の余地がないほど明確になるからだ。

「これは、悲観的な科学理論ではなく、事実なのです。過去50年間だけで、これまでの人類史上全体を超える大きさのダメージを地球に与えてしまいました」と、アルテュベルトランは警告する。

 

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Oil residue landfill from the exploitation of oil sands, Fort McMurray, Alberta, Canada (Credit: Yann Arthus-Bertrand/Getty Images 507916706)

環境問題への取り組みを映画でも推進するため、アルテュベルトランは2009年に、初の長編作となる『Home(邦題:HOME 空から見た地球)』を公開。撮影国は54ヶ国にも渡り、全編を空からハイビジョンで撮影して、地球上で起こっている変化を間近に感じてもらおうとした。

「自然環境は毎年悪化しているため、生態系を映画で表現することは困難になる一方です。環境問題を伝える時代は終わり、今は誰もが環境問題に取り組む必要があります。例えば、風力エネルギーで世界を変えることは、もうできないと思うのです。私たちに必要なのは、文明における根底からの変化です。つまり、生産と消費のあり方を変えなければなりません」と、アルテュベルトランは言う。

この信念は、アルテュベルトランが人間性と人間圏という新たなテーマを追究することにも繋がった。世界60ヶ国の男女2000人を3年かけて取材して完成させた最新映画『Human』は、2015年9月に国際連合総会で上映された。

「人間同士が一緒に生きるという概念にフォーカスを移動させました。絶滅の危機に瀕しているゾウよりも、ヨーロッパで起こっている難民危機のような人類に関わる問題にもっと大きな懸念を感じます」と、アルテュベルトランは話す。

世界の難民に焦点を当てた映画を制作したり、マイクロソフト元会長のビル・ゲイツと妻メリンダによって創設された世界最大慈善基金団体Gates Foundationと共同で女性の地位について調査を行ったりするなど、アルテュベルトランはその他にも多くのプロジェクトを手掛けている。しかし、環境問題に対する真摯な姿勢は、今でも変わらない。アルテュベルトランは、環境保護と持続可能な発展を目的としてNPOのGoodPlanetを設立し、自然に則した農法、生物気候学に基づいた学校の建築、エネルギーや廃棄物処理に対する解決策の提供、森林と海洋の保護なども行っている。

どんなテーマやプロジェクトでもアルテュベルトランが成功に導き続けることができるのは、地球への愛があるからに他ならない。

 

ヤン・アルテュベルトランの鮮烈な空撮写真は、gettyimages.co.jpをご覧ください。