ゲッティイメージズが予測したビジュアルトレンドは、至る所で見受けられます。しかし、そのトレンドの取り入れ方には驚きが詰まっています

ゲッティイメージズの専門家は毎年『Creative in Focus(クリエイティブ・イン・フォーカス)』で、翌年のビジュアルトレンドを予測しています。「Outsider In(アウトサイダー・イン」、「Extended Human(エクステンデット・ヒューマン)」、「Divine Living(ディバイン・リビング)」、「Messthetics(メスセティックス)」、「Silence vs. Noise(サイレンスvsノイズ)」、「Surreality(シュールリアリティ)」という6つのキーワードは、2016年のビジュアルトレンドを表現するために創り出された、世界中のビジュアルコミュニケーションの行方を包括的に表すキーワードです。これらのトレンドは、人々の世界の見方や概念を変えるほど影響力があり、2016年の幕開けから様々なメディアに取り上げられています。

1. Outsider In(アウトサイダー・イン)

予測:大衆の嗜好がより斬新的で大胆になるにつれて、限界に挑む人々や型破りなビジュアルが広く受け入れられるようになります

予想外の立場逆転から、反逆児や「勝ち目がない」と言われた人物の人気上昇まで、各種のアウトサイダーが勢力を増しています。

例えば、デオドラント製品のSecret(シークレット)は、#StressTestという広告で注目を集めました。独身の女性1人が男性25名の中から夫にふさわしい人を選び出す米リアリティ番組『The Bachelorette(ザ・バチュラレット)』のシーズン初日に放映されたこのCMでは、思い切って逆プロポーズする女性の姿がとても新鮮であり、たちまちソーシャルメディアで人気を博しました。

Google開発のAndroid(アンドロイド)OSでは、「Be together. Not the same(違っていても一緒にいよう)」というキャンペーンを立ち上げました。石、はさみ、紙は、じゃんけんゲームにおいて互いに強弱関係にあっても、3種の力は均等に関わり合いながら存在しています。学校で仲間外れにされた石、はさみ、紙がそれぞれ立ち向かって団結していくこの物語では、違いを受け入れて一緒に歩んでいくことの大切さを分かりやすく伝えています。

また、自動車ブランドのMini(ミニ)は、今年の全米フットボール優勝決定戦「スーパーボウル」のコマーシャルで、アウトサイダーのステータスを#DefyLabelsで発しました。スポーツ選手、俳優、ミュージシャンが、ミニクーパーについて思い思いの発言をしますが、最後にベテラン男優のハーヴェイ・カイテルが「This car doesn’t care what you call it.(この車はあなたが何と呼ぼうと気にしない)」と言って締めくくります。

2. Extended Human(エクステンデット・ヒューマン)

予測:生活の隅々にまでテクノロジーが浸透していくにつれて、人間性に対する固定観念が変化してきています。人間と機械が融合したビジュアルは、人々の目を釘付けにします

テクノロジーは、想像以上に著しい進化を遂げており、これはビジュアルにも反映されています。見たことのない革新的なウェアラブル機器をはじめ、新しい発明が次から次へと生まれ、私たちの身体機能まで変化させています。

National Multiple Sclerosis Society(全米多発性硬化症協会)はこの春、感動的な映像を公開しました。サーファーだったスティーブ・ベティスは、57歳の時に多発性硬化症と宣告され、現在は車椅子生活を送っています。しかし、新テクノロジーのおかげで、自宅にいながら波に乗るスリルを仮想的に体感することが可能になったのです。さんさんと降り注ぐ太陽の光、打ち寄せる波、サーファー仲間との握手など、視覚的にも聴覚的にもまるで本物のように感じることができたスティーブの目は、きらきら輝いています。

また、スポーツブランドのPuma(プーマ)は、陸上競技ランナーが仮装ライバルを想定してトレーニングすることを可能にするBeatBot(ビートボット)を発表。このロボットは、自分の限界に挑戦して自己記録の更新を目指すことを目的に、マサチューセッツ工科大学のエンジニアによって開発されました。人間と機械が融合した商品は今後も増え続けることでしょう。

「Manus x Machina: Fashion in an Age of Technology(手×機械:テクノロジー時代におけるファッション)」も忘れてはなりません。ニューヨークのメトロポリタン美術館にあるCostume Instituteで毎年開催される展覧会の今年のテーマは、職人の手作業によるオートクチュールと機械との融合です。ファッションとテクノロジーの進歩は切っても切り離せない仲であり、展覧会に先駆けて行われたMETガラパーティでは、セレブたちが実験的なファッションを披露して話題を呼びました。

Dimitrios Kambouris/Getty Images
Taylor Hill/Getty Images
Dimitrios Kambouris/Getty Images

3. Divine Living(ディバイン・リビング)

予測:ブランドが商品の価値を表現するために、想いや考え方をビジュアル化し、人々により有意義な消費生活を提案するようになります

健康、気候変動、消費活動、国内外の政治などへの社会的意義への意識がますます高まっており、神聖さと崇高さを感じさせるシンプルで美しい生き方が求められています。その理由は、量より質、モノよりコトが重要視されるようになったからです。

カナダケベック観光局が制作したビデオ「Blind Love(見えない愛)」は、多くの人々に感銘を与えています。アメリカ人ミュジーシャンのダニー・キーンは生まれた時から盲目ですが、森林、川、野原、海岸、都心と田舎など、ケベック州の多面な素晴らしさを彼が体感する様子は、いきいきと伝わってきます。

「キスする時、泣く時、願い事をする時など、人は目を閉じることがあります。その理由は、人生で最も大事な物事はハートで感じる必要があるからです」と話すキーン。人生を意義あるものにするのは、自分自身の心なのです。

4. Messthetics(メスセティックス)

予測:ブランドは、醜さ、混沌、泥臭さ、グロテスクなものなど本能的な美的感覚を刺激するビジュアルを利用するようになります。なぜなら、日常や一般と相反するビジュアルは、人間の目と精神を楽しませてくれるからです

今年は、乱雑さや醜さを取り入れることが、一際目立つための方法となっています。なぜなら、ほかとは違った新しさと映るからです。企業ブランド、クリエイティブ作品、文化団体などが、乱雑さや醜さの持つ影響力を利用して、見る人にインパクトを与えています。

Museum of Fine Arts Boston

例えば、「Megacities Asia(メガシティ・アジア)」は、現在ボストン美術館で開催中の展示会で、住民数が1千万人を超えるアジアのメトロポリスの現実を視覚的に表現しています。美術館のあちらこちらに置かれた展示物からは、このような巨大都市が社会にもたらしている混乱、反復的な生活、目まぐるしい暮らしの様子が強烈に伝わってきます。

Endless Possibilities - Getty Images / AlmapBBDO
Endless Possibilities - Getty Images / AlmapBBDO

ゲッティイメージズでも、このトレンドを「Endless Possibilities(無限の可能性)」という春のキャンペーンで取り入れることにより、ストックフォトによる作品の自由さとレベルの高さを紹介しています。ブラジルの広告代理店AlmapBBDOと4ヶ月間かけて制作した4つの印象的な作品では、エディトリアル素材は一切使わず、クリエイティブ素材を繋ぎ合わせて著名人の顔を表現することにより、ビジュアルの持つ力を最大限伝えています。

5. Silence vs. Noise(サイレンスvsノイズ)

予測:騒々しさが蔓延する社会で余白のあるビジュアルを使うことで、静寂さが際立ち、気分や感情が伝わりやすくなります

ミニマリズムは、最近のマーケティングキャンペーンだけでなく、クリエイティブやエディトリアルの分野でもよく見受けられるアプローチです。イギリスの新鋭エレクトロポップトリオ、イヤーズ・アンド・イヤーズは、彼らのヒット曲「Desire(デザイア)」の新バージョンとして、スウェーデンシンガーのトーヴ・ローを迎えてビデオクリップを公開しました。YouTubeにアップされてから3ヶ月で1850万回も視聴されたこのビデオでは、直線と落ち着いた色合いに、渦巻く身体と明るい色相が強調され、美しく仕上げられています。4月の『Harper’s BAZAAR(ハーパーズ バザー)』の特集記事では、コントラスト、ネガティブスペース、シルエットを巧みに活用することで、米女優のジェニファー・アニストンのポートレート写真を美しくも控えめなスタイルで紹介しています。

Harper's Bazaar April 2016

また、スウェーデンの電子決済システムKlarna(クラーナ)が3月に立ち上げた「Smoooth(スムーズ)」というキャンペーン映像からは、サービスのスムーズさがシンプルに伝わってきます。ビデオ監督を担当したThe Perlorian Brothers(ザ・ぺロリアン・ブラザーズ)は、一風変わったスタイルで知られるクリエイティブディレクターで、作品について「最小限、写実的、面白み、スムーズ、この4点からアプローチしました。ちょっと変わっていてアートっぽい感じにしたかったのです」と語っています。静かな雰囲気の中、飾り気のないセッティングで意外なオブジェクトに焦点を当てることにより、ユニークで印象的に仕上がっています。

6. Surreality(シュールリアリティ)

予測:デジタル時代を生きる私たちの多面的な人生を視覚的に反映させることで、よりクリエイティビティを発揮することができます

Stella McCartney Summer 2016

この幻想的で夢のようなビジュアルを、最近よく目にするようになりました。ファッション広告やエディトリアルでの表現方法に適しているためか、ファッションデザイナーのステラ・マッカートニーの2016年夏のキャンペーンでも、その効果を利用しています。草のような背景でスーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァとマリアカルラ・ボスコーノが絡み合って複製されている広告を見ていると、どこからどこまでがナタリアなのかマリアカルラなのか分からなくなってくるほどです。

Stella McCartney Summer 2016

このトレンドは、他の業界でも見受けられます。日本の食品メーカーマルコメは、「カワイイ味噌汁 原宿味」発売を記念して、ウェブCM「世界初のかわいい味噌汁/Definition of Japanese Kawaii」を発表しました。サイケデリック調のポップアートで、サウンドトラックもこだわり、日本の味噌とかわいい文化を夢心いっぱいに発信しています。

2016年ビジュアルトレンドの詳細は、『Creative In Focus 2016』またはウェビナー(英語)をご覧ください。